恋と旧懐~兎な彼と1人の女の子~
「あっこの子唯兎くんだ! ……じゃなくて暁くんだ」
嬉しそうに眺めたのもつかの間,愛深は突然ひらめくように声あげる。
いや
「違うよ」
すかさず静かな声で突っ込めば
「いや分かってるよ。そうじゃなくて」
と愛深も慌てる。
そして,最後には笑った。
また愛深はピンクのウサギを見て,そっとその頬を撫でる。
そっくり,とでも思ってるんだろうか。
名前に兎が入っていること以外,共通点なんて1つもないのに。
「あの,私も……」
おずおずと緊張ぎみに渡されたのは,小さなラッピング。
「なに? これ」
俺が愛深の目を見ると愛深は照れくさそうに笑った。
「えと,クリスマスだし……栞のプレゼントです。暁くんも本読むでしょ?」
その言葉を聞いて,俺は小さく瞬く。
毎日の生活を振り返ると,更に不思議に思った。
「……なんで知ってんの。俺愛深に会ってから学校で読んでたことないよね」
「そ,れは……秘密,です」
狼狽えた愛深が,おへそのまえで×を作る。
その事には気付いてないのか,そのままその形を作った両手はにぎにぎと落ち着きなく動いていた。
俺が本を読んだり持ち歩いたりしている姿を見せたのは,校内だと愛深に逢うより前のはず。
何故なら,愛深が訪ねて来るようになってからは,本を読む時間なんて無かったからだ。
それからは,本を読むのは愛深が登校していない日に限られている。
結局本の話はうやむやになり,別れ際。
お互い軽く挨拶を交わした。
愛深は少し名残惜しそうな表情を見せると,直ぐに笑顔で踵を返す。
ふわりとあがる髪の毛に,手が伸びた。
「? 何かした?」
その手は届く前に引っ込め,その空気の揺れを感じ取った愛深が振り返る。
「い,いや……何も」
俺ら自分でも理解できない行動の答えを探しながら,咄嗟に返答を誤魔化した。
動いたのは,たったの腕1本。
だからなのか,俺は右手を見つめて茫然とする。
「えっと,じゃあね?」
「……待って」
まだ,結論が出てない。
なのに,勝手に帰らないで。
俺は声に意思と力を込めて,背を向ける愛深
呼び止めた。
「なんで……いや,なんでもない。じゃあね」
こんなこと,聞いてどうするんだって。
口にする寸前過ってしまったから,俺は結局,何もいわずに早足で愛深のもとを去る。
その様子は端からみれば,いや,事実置いてけぼりそのもので。
愛深の動揺が,背中に伝わるようだった。
だけど,愛深の手元のウサギを思い出せば,あいつが愛深を慰めてくれるような気がして。
俺は振り返ることなく前に歩いた。
嬉しそうに眺めたのもつかの間,愛深は突然ひらめくように声あげる。
いや
「違うよ」
すかさず静かな声で突っ込めば
「いや分かってるよ。そうじゃなくて」
と愛深も慌てる。
そして,最後には笑った。
また愛深はピンクのウサギを見て,そっとその頬を撫でる。
そっくり,とでも思ってるんだろうか。
名前に兎が入っていること以外,共通点なんて1つもないのに。
「あの,私も……」
おずおずと緊張ぎみに渡されたのは,小さなラッピング。
「なに? これ」
俺が愛深の目を見ると愛深は照れくさそうに笑った。
「えと,クリスマスだし……栞のプレゼントです。暁くんも本読むでしょ?」
その言葉を聞いて,俺は小さく瞬く。
毎日の生活を振り返ると,更に不思議に思った。
「……なんで知ってんの。俺愛深に会ってから学校で読んでたことないよね」
「そ,れは……秘密,です」
狼狽えた愛深が,おへそのまえで×を作る。
その事には気付いてないのか,そのままその形を作った両手はにぎにぎと落ち着きなく動いていた。
俺が本を読んだり持ち歩いたりしている姿を見せたのは,校内だと愛深に逢うより前のはず。
何故なら,愛深が訪ねて来るようになってからは,本を読む時間なんて無かったからだ。
それからは,本を読むのは愛深が登校していない日に限られている。
結局本の話はうやむやになり,別れ際。
お互い軽く挨拶を交わした。
愛深は少し名残惜しそうな表情を見せると,直ぐに笑顔で踵を返す。
ふわりとあがる髪の毛に,手が伸びた。
「? 何かした?」
その手は届く前に引っ込め,その空気の揺れを感じ取った愛深が振り返る。
「い,いや……何も」
俺ら自分でも理解できない行動の答えを探しながら,咄嗟に返答を誤魔化した。
動いたのは,たったの腕1本。
だからなのか,俺は右手を見つめて茫然とする。
「えっと,じゃあね?」
「……待って」
まだ,結論が出てない。
なのに,勝手に帰らないで。
俺は声に意思と力を込めて,背を向ける愛深
呼び止めた。
「なんで……いや,なんでもない。じゃあね」
こんなこと,聞いてどうするんだって。
口にする寸前過ってしまったから,俺は結局,何もいわずに早足で愛深のもとを去る。
その様子は端からみれば,いや,事実置いてけぼりそのもので。
愛深の動揺が,背中に伝わるようだった。
だけど,愛深の手元のウサギを思い出せば,あいつが愛深を慰めてくれるような気がして。
俺は振り返ることなく前に歩いた。