恋と旧懐~兎な彼と1人の女の子~
弘の忠告
クリスマスの雰囲気は大概取り払われた,月曜日の放課後。
弘に止められて,俺は弘と教室で二人きりになるまで待たされた。
「もういいでしょ。なんなの」
虫の羽ばたく音1つ聞こえない。
夕日が目に眩しい窓の外に眉を寄せて,俺は弘に尋ねる。
「なぁ,デート,ほんとに行ったの?」
遠回りを好まない弘は,軽さの欠片もない口調で俺を正すように口にした。
俺は,ほんとは。
俺が愛深と約束をしたことから始まって,その後の俺の行動全てに弘が眉を寄せていることを知っていた。
いつにも増して観察的で,静かだった弘に,またその理由に俺が気付かないはずもない。
それでも,弘は黙っていてくれたから。
俺は,知らんぷりをした。
なのに口にして来た理由も,考えることはない。
「デートじゃない……行った」
今も,子供みたいにそっぽを向くことしか出来なかった。
「はぐらかすな,告白された? クリスマスだけど」
それは赦されないと分かったままで,それでも意地を張る。
関係ないだろって,1番近い弘にそんなこと言えるはずもないのに。