恋と旧懐~兎な彼と1人の女の子~
無視できない気持ち
誰が見てもボロいと共通認識を抱く,アパートの1室。
過去と,今と,愛深や弘を交互に頭に浮かべながら,1人ソファーに寝転んでいた。
ただそこにいるだけで,音なんかするわけもない電子時計の数字がどんどん大きくなっていく。
電気なんか着けても消しても,心情に変わりはない。
待っても待っても1人で,しんとしている。
早く帰ってきたら良いのに。
もう少し,平和に1人でいたい。
やがて両極端な感情がたった1人の存在に向かう。
今日はどんな人だろう。
出来るだけ,穏やかで,静かで,直ぐに寝てくれたらいい。
そんな誰が救われるわけでもない考えを抱くようになったのは,どの放課後からだったのか。
もう,自分でも分からない。
それから,何が起きることもなく。
何をすることもなく。
左側の数字までいくつか変化したとき,俺の母親は帰ってきた。