300字の恋愛ものがたり
第15話:バスの中で
バスに乗る必要のある会社に就職したことを、何度後悔したか知れない。
渋滞で簡単に遅れるし、いつも満員だし……う、また誰かが触ってくる。三日ほど前からだ。
普段通りならあと二つ先で降りてくれるはず。それまでの辛抱……
「すみません、ちょっと」
私と、後ろの痴漢に割り込む人。
「三日ぐらい前からこの人に触ってますよね」
痴漢の手を掴み、その人は言った。
「そりゃもう、神様に見えたものよ」
「はいはい、その人が父さんなんでしょ」
「でもそんな人がいるとは限らないから、電車やバスでは」
「わかってる、気をつけます。そのために合気道も習ってるし」
行ってきますと娘は出かけていく。年頃の女子の親は、いつの時代も同じ心配をする。
渋滞で簡単に遅れるし、いつも満員だし……う、また誰かが触ってくる。三日ほど前からだ。
普段通りならあと二つ先で降りてくれるはず。それまでの辛抱……
「すみません、ちょっと」
私と、後ろの痴漢に割り込む人。
「三日ぐらい前からこの人に触ってますよね」
痴漢の手を掴み、その人は言った。
「そりゃもう、神様に見えたものよ」
「はいはい、その人が父さんなんでしょ」
「でもそんな人がいるとは限らないから、電車やバスでは」
「わかってる、気をつけます。そのために合気道も習ってるし」
行ってきますと娘は出かけていく。年頃の女子の親は、いつの時代も同じ心配をする。