300字の恋愛ものがたり
第8話:鏡開き
家に帰ると、キッチンに餅の欠片が山を成していた。
「……ああ、鏡開きか」
「うん、お義母さんにもらったの。おかきにして食べたら美味しいわよって」
「気をつけろよ」
油で米が揚がる良い匂いと、塩をふるパラパラという音。
晩酌のつまみになった。
「いただきます」
「今年も円満に、健康に過ごせますように」
妻が手を合わせて祈った後、こちらを見てはにかんだ。
「来年は三人だね」
「そうだな」
まだ目立たない妻のお腹に、つい視線をやってしまう。
「さすがに来年はまだ、おかき一緒に食べられないけどね」
「そりゃそうだ」
ふふ、と笑い合った。出会った頃の初々しい笑顔とは違う、母親の色がにじんだ大人の笑み。
どちらの彼女も、とても好きだ。
「……ああ、鏡開きか」
「うん、お義母さんにもらったの。おかきにして食べたら美味しいわよって」
「気をつけろよ」
油で米が揚がる良い匂いと、塩をふるパラパラという音。
晩酌のつまみになった。
「いただきます」
「今年も円満に、健康に過ごせますように」
妻が手を合わせて祈った後、こちらを見てはにかんだ。
「来年は三人だね」
「そうだな」
まだ目立たない妻のお腹に、つい視線をやってしまう。
「さすがに来年はまだ、おかき一緒に食べられないけどね」
「そりゃそうだ」
ふふ、と笑い合った。出会った頃の初々しい笑顔とは違う、母親の色がにじんだ大人の笑み。
どちらの彼女も、とても好きだ。