至高の冷酷総長は、危険なほどに彼女を溺愛する -CLASSIC DARK-
わたしは連絡が来ないどころか、スマホを持ってもいない。
一度、お母さんに勇気を出して頼んでみたことがある。
『みやびはコンルールで遠征も多いから、なにかあったときのために持たせてるだけだよ」
そう優しく言われると、なにも返事ができなかった。
今の時代、高校生のほとんどがスマホを持ってることくらい、わかってるはずなのに……。
なんて、ろくに能もない分際で贅沢を言えない。
再度ダイニングルームに目を向ける。
楽しそうな声も、わたしが入ったとたんに静かになると思うと、玄関をくぐるのでさえ億劫だった。
「……ただいま」
ダイニングルームの扉を開けたのと、中で笑い声がはじけたのは同時。
陰気な一声では、3人の陽気な声に勝てるわけもなく。
「それでねっ、私とサエちゃんで先生に報告しにいったの! そしたら――」
話が盛り上がる中、誰もわたしが帰ってきたことに気づかない。