至高の冷酷総長は、危険なほどに彼女を溺愛する -CLASSIC DARK-
/SIDE
♦
♦
「――静日、」
おれが名前を呼んだのと、相手が球を突いたのはほぼ同時だった。
ラシャの上を勢いよく転がったそれは、かたい音を立てて赤玉にぶつかった。
軌道はぶれることなく、操られるようにしてポケットへ吸い込まれていく。
「ひゅう、相変わらずイレもダシも完璧だな」
「で、なに?」
「うん?」
「なんか言いかけてなかった、お前」
静かな瞳がこちらを向く。
底の見えない深い深い漆黒。
よく知った相手なのに、毎度どきっとさせられる。
ときめき、ではなく、畏れ。
「まだ龍泉閣には行かないほうがいい。出待ちの女がうじゃうじゃしてる」
「ん……どっちにしろ今日だーるいから顔ださねーつもりだったけど」
「それもそれで問題だよ。先月だって、静日が行かなかったせいでおれが怒られたし」
「お前を怒った奴だれ? 俺が消しとくよ」
漆黒が、すうっと妖しく弧を描く。
それだけのことで、背筋には冷たい汗が伝う。
「ジョーダンだって」