至高の冷酷総長は、危険なほどに彼女を溺愛する -CLASSIC DARK-




午後19時40分。


通学路で真凛ちゃんと別れたあと、こっそり進行方向を変えて、この時間まで繁華街で時間を潰した。


そして現在、いつも出待ちで来ている場所とはいえ、荘厳な建物の門前にひとり。

心臓が喉から飛び出てきそうだった。



──『今夜ひとりで、龍泉閣にこれを持って来な』


京様にそう言われた。

記憶はしっかりあるはずなのに、どんどん自信がなくなってくる。

幻聴だったんじゃ……?


だって、冷静に考えて、龍泉閣に庶民を呼ぶなんてありえなくない?


それでも、“京静日”の学生証がわたしの手元にあるのは紛れもない事実……。


まあ、新手の嫌がらせだと思えば、ずいぶん納得のいくハナシ。

後退しかけた足を戒めて、龍泉閣を見上げる。

よし、行くぞ!


ところで、どうやって入るんだろう……。

意思を固めたのはいいものの、さっそく壁にぶつかってしまう。


見た感じ、ピンポンもないし……。

門をくぐらないと扉を叩くこともできないのに、がっちり閉じられている。


呆然と立ち尽くすこと5分ほど。


「──宮名様ですか?」
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