至高の冷酷総長は、危険なほどに彼女を溺愛する -CLASSIC DARK-
ポーチから取り出したそれを、相手に差し出す。
しばらく無言で見つめたあと、ゆっくりとした動きで受け取ってくれた。
「どうしてあなたのような人が静日様の学生証を……と、尋ねたいところですが。まあいいでしょう、私から渡しておきます」
「あ、ありがとうございます。よろしくお願いいたします!」
よかった、解決した!
と胸を撫で下ろしたのもつかの間。
「これでもう、あなたがここへ近づく理由はなくなった、ということですよね?」
「っ、──」
鋭い視線に容赦なく貫かれた。
ばくん、と心臓が嫌な音をたてる。
背中には冷たい汗が伝う。
「ここは庶民が足を踏み入れていい場所ではありません。わかったら速やかに立ち去りなさい」
ああ……この人、本気だ。
本気でわたしのことを拒んでる。
地面に張り付いた足をやっとの思いで動かして、逃げるように背中を向けた。
それから一度も振り返らず、走って帰った。
京様には会わず、学生証だけ預けて帰る。
判断は正しかったと、このときは本気で思ってた──────。