至高の冷酷総長は、危険なほどに彼女を溺愛する -CLASSIC DARK-

「ていうか、すばるまだ来ないの何。道にでも迷ってる?」



……こういう風に、今日会ったばかりの女を下の名前で呼んでいることも、まだ信じられない。

そもそも……。


──『ねえ、お前名前なんてゆーの』



静日が、自ら名前を尋ねた人間は初めてだ。


あのとき耳を疑った。

長年の付き合いを経てようやく理解った気になっていたところで、
おれの中の京静日という常識がまた壊されてしまった。



「やっぱ門番なんかに任せんの不安だな。俺が出て行ったらだめ?」

「だめに決まってんだろ! 立場を自覚してくれ頼むから」

「はあ〜うっざ」


言葉こそ軽いものの、冷えた目で見つめられびくりとする。

ちょうどそのタイミングで、部屋の扉が3回音を立てた。



「──静日様。安藤でございます」


静日の視線が扉へゆっくりスライドする。
< 68 / 309 >

この作品をシェア

pagetop