一夜限りのはずだったのに実は愛されてました
月曜日。
いつもと同じように出勤した。
朝早くルーティンをこなし、コーヒーのドリップもした。
「紗夜ちゃん、おはよー」
真子ちゃんが出勤してきた。
真子ちゃんはツヤツヤのロングヘアを靡かせ颯爽と出勤してくる。丸の内のOLのように綺麗目なお姉さんの格好で私の憧れが詰まっている。
もちろん似合わないのはわかっているから真似は出来ないが見ているだけで保養になる。
「真子ちゃん、今日も素敵」
「本当?初売りで安かったから買い物しまくったわ。バーゲン、楽しいわよねー」
真子ちゃんは見た目に反してこの気さくさや庶民なとこがまた魅力的。
私は朝から真子ちゃんと話せて少し気分が上がった。
デスクに着くと年末の残り仕事を片付け始めた。
矢口さんも金曜のお年賀が喜ばれたと声をかけてきてくれた。
アットホームでとてもいい職場だ。
以前まではソフトウェア開発だったが今はクラウドサービスへと移行しておりそちらが主流になりつつある。
松下さんはそれにいち早く目をつけ、さらなる事業拡大に成功した。
一般に使われているもので私たちが利用しているものも沢山ある。
こんな小さな会社でこんな凄いことをしているなんて驚いたものだった。
会社は規模じゃないんだと改めて考えさせられた。
「紗夜ー!コーヒーくれ」
一応CEOとしてブースがある松下さんは顔を出すと私にコーヒーを頼んだ。
もちろんこれもよくあること。
いつもなら嬉しくなるところだが今日だけは行きたくないと思ってしまった。
金曜日の話にはもう触れたくない。
でもこれも仕事、と思ってコーヒーをカップに入れ持っていく。
コンコン
ノックして入ると大きなデスクの前に座り電話をしていた。
良かった。
コーヒーを置き、さっと部屋を出てしまおうと思ったら腕を掴まれた。
松下さんが電話をしているため声を出すことができず、そのまま動くことができなかった。
掴まれている彼の手の大きさは知っている。
あの時翻弄されたこの手を思い出し顔が熱くなる。
それじゃ、という声が聞こえ我に返った。
「紗夜、どうして何も言わずに帰ったんだ。どれだけ心配したか……」
「すみませんでした」
ガバッと頭を下げると手を振り解き、部屋を出ようとしたがうまくいかない。
松下さんは私の手を離してくれなかった。
「まだ話は終わってない」
「仕事中ですから失礼します」
「紗夜!」
今度こそ私は松下さんの手を振り解くと部屋から出た。
仕事中だと伝えたからか松下さんは手を離してくれた。
でもそれが少しだけ寂しく思った。
またもう一度、手を離さないと言われたら私はもう彼から離れられなくなっていた。すがってしまったかもしれない。
席へ戻るが動揺して仕事が手につかない。
お昼を過ぎても時折感じる視線に私は落ち着かない。
定時になり、松下さんに引き止められそうになるのを可奈ちゃんと真子ちゃんにまぎれ退社した。
「何かあった?」
2人に聞かれるけど答えることなんてできない。
「ちょっとね。この前可奈ちゃんには話したんだけど今度お見合いすることになったの。それで実家からは仕事を辞めて戻るように言われてて……それを金曜に松下さんに話したの」
「え?ちょっと!どういうことなの?」
真子ちゃんに問い詰められ、この前可奈ちゃんに話したことを改めて話した。
それに加えて、お見合いが月末の28日に決まったことを話すと可奈ちゃんも驚いていた。
「こんなにすぐの話だったの?紗夜ちゃん!そんな簡単に人生決めたらダメだって。本当にそれでいいの?」
「仕方ないの。決められてることだからね。私も了承してる」
声を張り、から元気だと分かるだろうけど努めて明るく話した。
「遅くとも年度末には辞めることになると思う。父からはすぐに辞めるよう言われてるから、どこまで待ってくれるかは分からないけど」
「どうしてそんな言いなりになるの?そこに紗夜ちゃんの気持ちはないよね?」
私は言い返せなかった。
それが政略結婚というものだからと割り切るしかない気持ちは理解してもらえないだろう。
いつもと同じように出勤した。
朝早くルーティンをこなし、コーヒーのドリップもした。
「紗夜ちゃん、おはよー」
真子ちゃんが出勤してきた。
真子ちゃんはツヤツヤのロングヘアを靡かせ颯爽と出勤してくる。丸の内のOLのように綺麗目なお姉さんの格好で私の憧れが詰まっている。
もちろん似合わないのはわかっているから真似は出来ないが見ているだけで保養になる。
「真子ちゃん、今日も素敵」
「本当?初売りで安かったから買い物しまくったわ。バーゲン、楽しいわよねー」
真子ちゃんは見た目に反してこの気さくさや庶民なとこがまた魅力的。
私は朝から真子ちゃんと話せて少し気分が上がった。
デスクに着くと年末の残り仕事を片付け始めた。
矢口さんも金曜のお年賀が喜ばれたと声をかけてきてくれた。
アットホームでとてもいい職場だ。
以前まではソフトウェア開発だったが今はクラウドサービスへと移行しておりそちらが主流になりつつある。
松下さんはそれにいち早く目をつけ、さらなる事業拡大に成功した。
一般に使われているもので私たちが利用しているものも沢山ある。
こんな小さな会社でこんな凄いことをしているなんて驚いたものだった。
会社は規模じゃないんだと改めて考えさせられた。
「紗夜ー!コーヒーくれ」
一応CEOとしてブースがある松下さんは顔を出すと私にコーヒーを頼んだ。
もちろんこれもよくあること。
いつもなら嬉しくなるところだが今日だけは行きたくないと思ってしまった。
金曜日の話にはもう触れたくない。
でもこれも仕事、と思ってコーヒーをカップに入れ持っていく。
コンコン
ノックして入ると大きなデスクの前に座り電話をしていた。
良かった。
コーヒーを置き、さっと部屋を出てしまおうと思ったら腕を掴まれた。
松下さんが電話をしているため声を出すことができず、そのまま動くことができなかった。
掴まれている彼の手の大きさは知っている。
あの時翻弄されたこの手を思い出し顔が熱くなる。
それじゃ、という声が聞こえ我に返った。
「紗夜、どうして何も言わずに帰ったんだ。どれだけ心配したか……」
「すみませんでした」
ガバッと頭を下げると手を振り解き、部屋を出ようとしたがうまくいかない。
松下さんは私の手を離してくれなかった。
「まだ話は終わってない」
「仕事中ですから失礼します」
「紗夜!」
今度こそ私は松下さんの手を振り解くと部屋から出た。
仕事中だと伝えたからか松下さんは手を離してくれた。
でもそれが少しだけ寂しく思った。
またもう一度、手を離さないと言われたら私はもう彼から離れられなくなっていた。すがってしまったかもしれない。
席へ戻るが動揺して仕事が手につかない。
お昼を過ぎても時折感じる視線に私は落ち着かない。
定時になり、松下さんに引き止められそうになるのを可奈ちゃんと真子ちゃんにまぎれ退社した。
「何かあった?」
2人に聞かれるけど答えることなんてできない。
「ちょっとね。この前可奈ちゃんには話したんだけど今度お見合いすることになったの。それで実家からは仕事を辞めて戻るように言われてて……それを金曜に松下さんに話したの」
「え?ちょっと!どういうことなの?」
真子ちゃんに問い詰められ、この前可奈ちゃんに話したことを改めて話した。
それに加えて、お見合いが月末の28日に決まったことを話すと可奈ちゃんも驚いていた。
「こんなにすぐの話だったの?紗夜ちゃん!そんな簡単に人生決めたらダメだって。本当にそれでいいの?」
「仕方ないの。決められてることだからね。私も了承してる」
声を張り、から元気だと分かるだろうけど努めて明るく話した。
「遅くとも年度末には辞めることになると思う。父からはすぐに辞めるよう言われてるから、どこまで待ってくれるかは分からないけど」
「どうしてそんな言いなりになるの?そこに紗夜ちゃんの気持ちはないよね?」
私は言い返せなかった。
それが政略結婚というものだからと割り切るしかない気持ちは理解してもらえないだろう。