一夜限りのはずだったのに実は愛されてました
私は両親と兄と共にこの辺りでは有名な料亭に来ていた。
本来なら相手の方の旅館で、となるところだが向こうにとっては再婚。
堂々とできないのかもしれない。
私たち家族が時間より少し前から待っているが相手はなかなか来ない。
流石に失礼じゃない?
父の顔を見ると苛立っているのがみてとれた。
10分遅れたところでようやくやってきた。
「遅くなりました」
やっと来たと思ったら笑っているだけで謝罪もない。
両親と共に来ているがみんな待たせたという自覚はないんだろう。
うちの方が立場が弱いと分かっているからなのだと思うと心の奥底から腹立たしかった。
父は苛立たしい気持ちを表に出すことなく、頭を下げていた。
「お待ちしておりました。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
そう挨拶されると私を上から下まで舐めるように見られた。
その視線にゾゾっとした。
正直気持ち悪い……。
薄ら笑いを浮かべ私の方を見て「若くていいな」と呟くのが聞こえた。
鳥肌が立つ。
「日野 大吾です」
「神宮寺 紗夜です」
自己紹介するがそれ以上何を言ったらいいのかわからない。
すると向こうの父親から食事をしながら話しましょうと提案された。
日野さんの父親はガハハと笑いながら自慢話を始めた。
うちの父はそれを苦笑いで相槌を打っている。
そもそもうちの父は昔気質で自慢をしてくるような人は苦手だし、それに対してゴマをするようなことも出来ない人だ。
なので今の対応が精一杯なのだろう。
兄もおとなしいのでひたすら日野さんの父親の独壇場だった。
「紗夜さんは普段何をしてるの?」
大吾さんが私に質問してきた。
生理的に受け付けない、気持ち悪い顔で私はこの場から逃げ出したいのを堪え、必死で思い浮かべた。
「そ、そうですね。美術館巡りや旅行が好きです」
「へぇ、美術館かぁ。旅行もいいね。一緒のお風呂とか入るのも楽しいしね」
背筋が凍った……。
無理。
本当に無理だ。
私は泣きたくなった。
俯いて何も言えなくなると、大吾さんは何を勘違いしたのか有り得ない事をいいだす。
「あれ?恥ずかしがってるの?処女なの?うわぁ、いいね。俺が初めてなんてそそられる」
その言葉に家族そろって開いた口が閉まらなくなった。
吐き気がする。
家族の目の前でよく平気でそういうことを言える。
日野さんの両親は流石に慌てて「大吾、黙れ」と制するがあまり効果はなさそう。
「紗夜ちゃんて若くて可愛いし、俺気に入ったよ。結婚するよ。早くうちに越してきなよ。楽しみだなぁ」
さすがの父もこの家族に嫁がせることを悩んでいる様子。
向こうの両親はこのバカ息子に言うことを聞かせられないのか、頭をかきながら笑っていた。
「ハハハ、大吾は紗夜さんをとても気に入ったようだ。この縁談を進めていいかな」
良いか悪いかで言ったら悪いに決まってる。
私たち家族はどうしたものかと思案してしまった。
「今日初めて会ったばかりですのでお互いよく考えてもらいましょう」
父は苦肉の策とでも言わんばかりに、今日の即決での返答は免れた。
「そうですな。じゃ、この後は2人でということで我々はそろそろ行きますか」
日野さんのご両親はすでに腰を上げてしまった。
あぁ……
ここに置いていかれてしまうの?
生贄になったような最悪の気分だ。
兄も母も私の顔を心配そうに覗き見てくるが助けてくれる気配はない。
父は2人に声をかけると、後ろ髪引かれるような顔をしながらも退室してしまった。
あぁ……
本来なら相手の方の旅館で、となるところだが向こうにとっては再婚。
堂々とできないのかもしれない。
私たち家族が時間より少し前から待っているが相手はなかなか来ない。
流石に失礼じゃない?
父の顔を見ると苛立っているのがみてとれた。
10分遅れたところでようやくやってきた。
「遅くなりました」
やっと来たと思ったら笑っているだけで謝罪もない。
両親と共に来ているがみんな待たせたという自覚はないんだろう。
うちの方が立場が弱いと分かっているからなのだと思うと心の奥底から腹立たしかった。
父は苛立たしい気持ちを表に出すことなく、頭を下げていた。
「お待ちしておりました。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
そう挨拶されると私を上から下まで舐めるように見られた。
その視線にゾゾっとした。
正直気持ち悪い……。
薄ら笑いを浮かべ私の方を見て「若くていいな」と呟くのが聞こえた。
鳥肌が立つ。
「日野 大吾です」
「神宮寺 紗夜です」
自己紹介するがそれ以上何を言ったらいいのかわからない。
すると向こうの父親から食事をしながら話しましょうと提案された。
日野さんの父親はガハハと笑いながら自慢話を始めた。
うちの父はそれを苦笑いで相槌を打っている。
そもそもうちの父は昔気質で自慢をしてくるような人は苦手だし、それに対してゴマをするようなことも出来ない人だ。
なので今の対応が精一杯なのだろう。
兄もおとなしいのでひたすら日野さんの父親の独壇場だった。
「紗夜さんは普段何をしてるの?」
大吾さんが私に質問してきた。
生理的に受け付けない、気持ち悪い顔で私はこの場から逃げ出したいのを堪え、必死で思い浮かべた。
「そ、そうですね。美術館巡りや旅行が好きです」
「へぇ、美術館かぁ。旅行もいいね。一緒のお風呂とか入るのも楽しいしね」
背筋が凍った……。
無理。
本当に無理だ。
私は泣きたくなった。
俯いて何も言えなくなると、大吾さんは何を勘違いしたのか有り得ない事をいいだす。
「あれ?恥ずかしがってるの?処女なの?うわぁ、いいね。俺が初めてなんてそそられる」
その言葉に家族そろって開いた口が閉まらなくなった。
吐き気がする。
家族の目の前でよく平気でそういうことを言える。
日野さんの両親は流石に慌てて「大吾、黙れ」と制するがあまり効果はなさそう。
「紗夜ちゃんて若くて可愛いし、俺気に入ったよ。結婚するよ。早くうちに越してきなよ。楽しみだなぁ」
さすがの父もこの家族に嫁がせることを悩んでいる様子。
向こうの両親はこのバカ息子に言うことを聞かせられないのか、頭をかきながら笑っていた。
「ハハハ、大吾は紗夜さんをとても気に入ったようだ。この縁談を進めていいかな」
良いか悪いかで言ったら悪いに決まってる。
私たち家族はどうしたものかと思案してしまった。
「今日初めて会ったばかりですのでお互いよく考えてもらいましょう」
父は苦肉の策とでも言わんばかりに、今日の即決での返答は免れた。
「そうですな。じゃ、この後は2人でということで我々はそろそろ行きますか」
日野さんのご両親はすでに腰を上げてしまった。
あぁ……
ここに置いていかれてしまうの?
生贄になったような最悪の気分だ。
兄も母も私の顔を心配そうに覗き見てくるが助けてくれる気配はない。
父は2人に声をかけると、後ろ髪引かれるような顔をしながらも退室してしまった。
あぁ……