人助けをしたら人気俳優との同居が始まりました
同居って本当ですか⁉
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「先生、今朝はなんだかお疲れですね。昨日また飲み過ぎたんですか」
診察開始前の少々慌ただしい時間、叶恵にそう声をかけてきたのは外来担当ナースの田村彩だ。
彩とは今の病院での勤務歴がほぼ同じで、年齢も叶恵の2歳下の27歳と同年代なので、スタッフの中では一番仲がいい。
「またって失礼ね。昨日は1滴も飲んでません」
「じゃあ、ついに彼氏ができましたか。デートだったとか」
「残念ながら違います。それより聞いてよ。昨日のあの地獄のような残業増し増しの勤務で疲れ果てて家に帰ったら、うちの玄関前に酔っ払った男が寝てたのよ」
「うわー、それは最悪ですね。で、警察に通報していろいろ面倒だったと?」
「いや、それが……」
「まさか先生、その人を介抱してあげたんですか」
黙って頷くと、盛大なため息をつかれる。
「警察に通報すればよかったんですよ。先生、危機感なさすぎです」
「泥酔した人間に何ができるっていうのよ? 急性アル中だったら救急搬送したけど、ただ眠ってるだけだったし、祖父が家に上げて寝かせてあげなさいって言ったから仕方ないじゃない」
「で、どんな人だったんですか」
「30歳前後で、身長約180、体重70前後」
「私が知りたいのは、その人の見た目です。介抱したくなるくらいかっこよかったんですよね?」
彩に言われて顔を思い出そうとするが、さっぱり覚えていない。
だいたい昨日は昼過ぎに集団食中毒の患者が10人搬送されてきて、その処置に借り出されてクタクタだったのだ。
その上で追い打ちをかけるような行き倒れの酔っ払いに遭遇したのだから、顔をじっくり見る心のゆとりなどあるはずがない。
瞳孔反射の確認のために眼球は見たし、気道確保のために口元に注意も払っていたけれど、それはパーツごとに見ただけで、全体像として捉えてはいなかった。
そう説明すると、彩に呆れられた。
「先生、そんなだからいつまでたっても彼氏ができないんですよ。せっかくの美人がもったいない。早見先生と付き合う気がないなら、その人で手を打ったらどうですか」
「どうして酔っ払いで手を打たなきゃいけないのよ? そんな出会いなら、彼氏なんていらないから。だいたい昨日のは、あくまでも祖父の善意なの。きっと今ごろは目を覚まして、頭痛と吐き気に悩まされながら見知らぬうちの祖父母と会って、気まずさのあまり逃げ出してると思う」
「たしかに私だったら恥ずかしさのあまり、お礼を言うのも忘れて逃げ帰りそうな気がします。あ、そろそろ時間だから、1人目の患者さん呼びますね」
「はい。お願いします」
診察開始前の少々慌ただしい時間、叶恵にそう声をかけてきたのは外来担当ナースの田村彩だ。
彩とは今の病院での勤務歴がほぼ同じで、年齢も叶恵の2歳下の27歳と同年代なので、スタッフの中では一番仲がいい。
「またって失礼ね。昨日は1滴も飲んでません」
「じゃあ、ついに彼氏ができましたか。デートだったとか」
「残念ながら違います。それより聞いてよ。昨日のあの地獄のような残業増し増しの勤務で疲れ果てて家に帰ったら、うちの玄関前に酔っ払った男が寝てたのよ」
「うわー、それは最悪ですね。で、警察に通報していろいろ面倒だったと?」
「いや、それが……」
「まさか先生、その人を介抱してあげたんですか」
黙って頷くと、盛大なため息をつかれる。
「警察に通報すればよかったんですよ。先生、危機感なさすぎです」
「泥酔した人間に何ができるっていうのよ? 急性アル中だったら救急搬送したけど、ただ眠ってるだけだったし、祖父が家に上げて寝かせてあげなさいって言ったから仕方ないじゃない」
「で、どんな人だったんですか」
「30歳前後で、身長約180、体重70前後」
「私が知りたいのは、その人の見た目です。介抱したくなるくらいかっこよかったんですよね?」
彩に言われて顔を思い出そうとするが、さっぱり覚えていない。
だいたい昨日は昼過ぎに集団食中毒の患者が10人搬送されてきて、その処置に借り出されてクタクタだったのだ。
その上で追い打ちをかけるような行き倒れの酔っ払いに遭遇したのだから、顔をじっくり見る心のゆとりなどあるはずがない。
瞳孔反射の確認のために眼球は見たし、気道確保のために口元に注意も払っていたけれど、それはパーツごとに見ただけで、全体像として捉えてはいなかった。
そう説明すると、彩に呆れられた。
「先生、そんなだからいつまでたっても彼氏ができないんですよ。せっかくの美人がもったいない。早見先生と付き合う気がないなら、その人で手を打ったらどうですか」
「どうして酔っ払いで手を打たなきゃいけないのよ? そんな出会いなら、彼氏なんていらないから。だいたい昨日のは、あくまでも祖父の善意なの。きっと今ごろは目を覚まして、頭痛と吐き気に悩まされながら見知らぬうちの祖父母と会って、気まずさのあまり逃げ出してると思う」
「たしかに私だったら恥ずかしさのあまり、お礼を言うのも忘れて逃げ帰りそうな気がします。あ、そろそろ時間だから、1人目の患者さん呼びますね」
「はい。お願いします」