人助けをしたら人気俳優との同居が始まりました

2

 リビングを出て行った太郎はブランケットと何かを手にして戻ってくると、その何かをレンジで温め始めた。
 いったい何をするつもりなのだろうかと疑問に思いながら見ていると、レンジから取り出した物とブランケットを叶恵に差し出してきた。

「これ、ホットアイマスク。叶恵さん、最近あまり眠れてないんじゃない? クマができてるからこれつけて少し昼寝しなよ。気持ちいいから」
「ありがとう」

 アイマスクとブランケットを受け取ってソファに横になろうとすると、ちょうど頭の位置に太郎が座った。

「この前は叶恵さんが膝枕してくれたから、今日は俺がしてあげる」
「私が眠ったら動けなくなるよ?」
「俺がしたいからいいの。ほら」

 と、太郎は自分の大腿をポンポンと叩く。
 太郎が言い出したら聞かないことは分かっているので、叶恵は言われたとおりにアイマスクをして、太郎の大腿を枕に横になる。
 じんわり温かいアイマスクと髪を撫でる太郎の手が気持ち良くて、このまま眠ってしまいそうだ。
 でもこんなにドキドキしていて、果たして眠れるだろうか。

「……ねえ、太郎くん」
「ん?」
「枕が硬い」

 冗談だと伝わったらしく、髪を撫でていた手が止まり、デコピンされた。

「いたっ」
「人の思いやりを台無しにする子にはお仕置きです」
「暴力反対。思ったことを正直に言っただけなのに」
「あんまりかわいくないことを言うと、その口塞ぐよ? もちろん俺の唇でね」

 叶恵は慌てて両手で唇を押さえる。
 太郎ならやりかねない。

「膝枕がいやなら腕枕でもいいよ。でもそうなるとここじゃ狭いから、叶恵さんの部屋に行こうか。お姫様抱っこして連れて行ってあげるよ」
「考えたら私、枕は硬いほうが好きだった。だからどうかこのままでお願いします」
「ハハハ。それよりもどう? 目、気持ちいいでしょ」
「うん、すごく」

 太郎は叶恵を寝かしつけるように、穏やかに頭を撫で続ける。
 でもこの状況で眠るのはもったいない気がした叶恵は、少々無茶なお願いをしてみる。

「太郎くん、何でもいいから何か話して」
「アバウトなリクエストだなあ。っていうか、眠ればいいじゃん」
「昼寝したら、夜眠れなくなりそうなんだもん。だから、私が眠らずに済むように何か話してほしいなって思って」
「今日は甘えっ子だね」

 太郎の苦笑する気配が伝わってくる。

「太郎くんがさっき甘やかしてあげるって言ったから、遠慮なく甘えることにしたの」
「それって俺に気を許してくれてるってことだよね」
「どういうこと?」
「普通は、気を許してる人にしか甘えないでしょ。なんだか嬉しいな」

 と、額に何かが触れた感触がした。
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