夏がくれた奇跡
「まあ私にとっては最高の男だけどね。みんなから見れば割と普通の男だし」


 そうだ、俺はお前にとっての最高であれば、それだけでよかった。たださくらとずっと一緒にいたかった。


「あのね、お願いがあるの」


 唐突に彼女が言った。


「最後に私の写真撮ってよ」


 はい、と彼女がカメラを渡してくる。


 お願いというより命令だ。彼女らしいけど。


 だがなぜそんなことを急に俺にしてほしくなったのか、その理由は聞いても教えてくれないらしい。


「……しょうがねぇな」


 俺はもう満面の笑みを浮かべて準備万端のさくらにカメラを向ける。


 ──カシャッとシャッター音が鳴った。


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