夏がくれた奇跡
 少し恨みがましげに彼女を見ると、勝ち誇ったように俺に尋ねてくる。


「そんなわがまま女に惚れたのはだれ?」


 答えなんてわかってるくせに。今度は俺がにっこり笑う。


「俺」

「正解」


 彼女がわざとらしくパチパチパチと手を叩く。そんな彼女の嬉しそうな様子に肩をすくめると、カシャッとシャッター音が鳴った。


 いつの間にカメラを構えたんだか。


「いい写真撮れた! 見たい?」

「……絶対見たくねぇ」


 はいあげる、と無理やり写真を押し付けられる。見たくねぇって言ったのに。


 さくらはいつも、撮ったらすぐに現像できるタイプのインスタントカメラを持ち歩いていた。


 学校にいるときも、遊びに行くときも、家にいるときも。


 カメラはいわば彼女の体の一部だと言えるかもしれない。


 でも──。


「……お前はさ」

「なに?」


「なんで写真撮るのはそんなに好きなのに、撮られるのは嫌いなの? 俺がカメラ向けても、絶対撮らせてくれねぇじゃん」


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