夏がくれた奇跡


 あれからさくらのストーカー行為は、収まるどころか勢いを増した。


 それはついに俺が懲りるまで長期間に及ぶ。


 そしていつの間にか俺たちは写真を撮り、撮られるという奇妙な関係に。


 お互いに恋心を抱くようになるまでには、ほとんど時間もかからなかったが。


 俺が昔に思いを馳せていると、さくらがおもむろに口を開いた。


「……それにしても、ひさしぶりだね。君と会うのは」

「そう、だな……」


 最後にさくらと会ったのは、一年ほど前。高校二年生の夏だ。


 あの夏、俺たちは離れ離れになった。彼女が遠い場所へ引っ越すことになったからだ。


 体が弱くて病気がちだったさくらには、俺と同じこの場所で暮らしていくことができなかった。


 さくらはその時から変わっていない。腰
まである長い黒髪も、無邪気な笑顔も。あと超変美人なところも。


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