独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる
奏一の言いたいこともわからない訳ではない。実家に連絡したときに、父から『響一くんから花嫁のドレスについて相談されたんだよね』と聞いたときは『あぁ、響兄さまは今しあわせなんだなぁ』と思った。だから最近会っていなくても、いまの響一が幸せなのは想像がつくし、それはもちろん心から祝福するけれど。
「それだと、奏一さんが幸せじゃないみたいじゃない」
「!」
けれど、結婚して幸せの最中にいるから業績を追い抜いて勝った、というのはあまり関係がない。と思う。
もしその理論が当てはまるのなら、今年同じように結子と結婚した奏一が総支配人を務めるホテルだって、良い業績を残せているはず。双子の二人は両方が幸せで両方が絶好調のはず。それならば二つのホテルは来年の査定でクラウンランクに格上げするはず。
それが叶わないのならば、その理論は立証されない。どちらかに偏りが出るのならば、結子と結婚した奏一が幸せではないことになってしまう。
そんなことを考えて、結子は一人苦笑する。
「あのね。奏一さんは自分が努力してないって言うけど、私そんなことはないと思うの。響兄さまと比べるからそう思うだけよ」
奏一の言う通り、確かに響一は努力を怠らない人だ。けれどだからと言って奏一が一切なにもしていない訳ではない。すぐ傍にこつこつ努力して結果を残す人がいるから、そう思ってしまうだけだ。