独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる
結子が奏一の横顔をじとっと見つめると、気付いた彼はにこやかに微笑んだ。整った笑顔の裏にある彼の本心には、まだ辿り着けない。
「ほんとだって。兄さんが結婚してくれなきゃ、俺も結婚できないんだから」
「……やっぱり順番って、気にするの?」
「するに決まってるじゃん」
先ほど晃一に同じことを突っ込まれていたとき、彼は適当に受け流した。だが今度はちゃんと答えてくれる。理由を教えてくれる。
真剣に結子の目を見つめて。
――強い心を込めて。
「だって結子、兄さんが結婚でもしない限り諦められないでしょ」
「!!」
奏一の言葉にがばっと顔を上げる。思わずはっと息を飲む。
知られていた。バレていた。長年響一に恋心を抱いていたこと。今日のお見合いも彼とのものだと期待してやってきたこと。
だが奏一にはそれ自体はどうでもいいらしい。むしろ最初から知っていて今さら、とでも言いたげに、頬杖をしたままムスッとそっぽを向く。
「結子、諦めがつくまで俺のことなんて見向きもしてくれないじゃん」
「それは……」
「でも兄さん、もう結婚したからね?」
「うぐ……」
改めて現実を突きつけられ、長年の恋心が露呈した羞恥心も忘れて変な声を出してしまう。
結子はつい数分前まで、憧れの響一と結婚できるとばかり思っていた。その失恋の傷はまだ真新しい。もちろん諦めざる得ない状況なのは間違いないが、すっぱり心を入れ替えるにはまだ時間が足りない。