独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる
「ちゃんと、受け入れるわ」
「そっか、それならよかった」
結子が心を決めて頷くと、奏一がどこかほっとしたように息を吐いた。
正直、奏一のことは今でも嫌いだ。嫌いというよりも苦手、という表現の方が近いかもしれない。
そんな人との結婚生活が上手くいくビジョンは少しも見えてこないが、それでも受け入れると決めたからには嘘でも偽りでもやるしかない。自分の演技力が高いとは思っていないが、少なくともお互いの両親や社交の場で夫婦として上手く振舞えれば問題はないだろう。
と思っていると、意気込む結子の姿を見た奏一が呆れたようなため息を吐いた。
「言っとくけど俺、戸籍上の関係だけじゃ満足なんてしないから」
「? うん……?」
「うん、じゃないって。絶対わかってないでしょ」
ぽつりと呟いた言葉の意味がわからず曖昧に首を傾げると、奏一がさらに呆れたようなため息をつく。
だから、そういうところなのだ。わかりにくい説明や回りくどい言い方をして結子をからかったりいじわるしたりするくせに、イエスもノーも言えずに困る姿を見て小馬鹿にするような態度をとる。奏一のそういう所が嫌いだというのに、彼は結子への説明を諦めたようだ。はぁ、とわざとらしくため息をついて、
「まぁ、今はいいや」
と話題を引っ込める。