独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる

「雑誌の撮影に使うお花を私が担当したの。けどそのモデルさんに『イメージと合わない』『勉強不足の子どもを連れて来るなんてふざけないで』って怒られちゃって……」

 事前の打ち合わせはかなり入念に行っていた。モデルだけではなく、グラビア撮影に関わるスタッフのチェックも入っていた。だから状況に合わせて多少の変更や変化はあるものの、大きなトラブルはなく終えられるはずだった。

 実際、現場には結子だけではなく、ベテランフラワーアーティストである職場の先輩もいた。しかし彼が次に使う背景のチェックをするために別スタジオに移動したタイミングで、結子はモデルの女性に強い口調で叱責された。他のスタッフ全員が見ている目の前で、明らかに仕事には関係ない結子自身のことまで否定されたのだ。

「撮影は止まっちゃうし、その人怒って控室に籠っちゃうし……もう収拾つかなくなっちゃって……」

 何が彼女の逆鱗に触れたのか、結子は今になっても心当たりがない。結子も先輩も仕事は完璧にこなしていたはずだし、仮に意に添わないことがあっても指示があれば調整することも変更することも可能だった。

 それにも関わらず激昂したモデルの女性が癇癪を起こしたせいで、予定していたスケジュールの半分も終わらないうちに撮影を中断することになってしまった。

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