独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる

「私の、せいで……っ……」
「結子……」

 思い出すだけで涙が出てしまう。自分なりに努力して、勉強して、工夫してきたつもりだった。クライアントの要望に応えられるように万端の準備を整えて臨んだはずだった。

 なのに結果は大失敗。周囲の大勢を巻き込んで、撮影予定時間を大幅超過して、撮影に関わった全員に迷惑をかけてしまった。もしかしたら、その後他の予定があった全く関係のない人にまで迷惑をかけてしまったかもしれない。

 最悪だった。こんな最低の状況になるなんて想像もしていなかった。

「よしよし」

 話を聞いた奏一は、結子の背中をとんとんと叩くと、震える身体をそっと抱きしめてくれた。綺麗に伸ばされたワイシャツがぐしゃぐしゃになってしまうかもしれないのに、自分の肩に結子の身体を預けさせ、顔を埋めさせるように胸を貸してくれた。

「結子、大丈夫だよ」

 そして背中を撫でながら、耳元で優しく名前を呼んでくれる。大丈夫、と言ってくれる。

「結子は昔からすごく努力家だから」
「……でも」
「結子の努力は間違ってないよ。いっぱい頑張ってるからこんなに手荒れしてるし、泣くほど悔しいって思うんでしょ?」

 奏一の慰めの言葉に、結子は嗚咽を堪えながらこくこくと頷いた。

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