独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる

 確かに彼のいうように、今日のために残業をしてデザイン案を考えたり、サンプルを沢山作って打ち合わせをしたり、何人ものスタッフやモデルのマネージャーと連絡を密に取り合って入念に準備をしてきた。撮影をより良いものにしようと、みんなが憧れるモデルの女性がさらに輝けるようにしたいと、懸命に奮闘したつもりだった。

 けれど結果が伴わなければ意味がない。プロセスが大事なのは当たり前。その上で結果が出せなければ、プロの世界では通用しないのだ。

「俺、結子のお花好きだよ?」

 情けなさから再び沈み込みそうになった結子の思考に、ふと奏一の意外な言葉が割り入ってきた。

 ダークグレーの上質なスーツから離れると、奏一の顔をそっと見上げる。

「半年前ぐらいかな。結子がイーストマリアホテルのパーティー会場でお花の準備してるとこ見たんだ」
「え……? そうなの……?」
「うん。たまたま打ち合わせで行ってて」

 結子が勤務するフラワーショップ『オーロラベール』は、奏一が総支配人を務めるイリヤホテル東京エメラルドガーデンとは取引がない。だから『結子のお花好きだよ』はただの慰めであると思っていたのに、彼は自分の経営するホテルではなく、別の場所で仕事中の結子を見かけたというのだ。

「まぁ、業界が業界だから、それまでにも結子の花自体は何回か見たことあったけど。でも働いてる姿を見るのはそれが初めてだった」

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