独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる
「しかし奏一くん、本当にうちの結子でいいのかい?」
「もちろんです」
極力表に出さないように、しかしどんよりと落胆する結子をよそに、奏一が笑顔で即答する。
「僕はずっと結子さんを望んでいました。先日兄が結婚したので、ようやく僕も結子さんに結婚を申し込めます」
彼の言葉の中には、さまざまな驚きの事実が含まれていた。
まず奏一が結子との結婚を望んでいたとは知らなかった。しかもそれが『ずっと』というのだから驚きである。
さらに今夜の見合いはただのお食事会ではない。お互いの両親の前で結子に結婚を申し込みたいと宣言するということは、彼は嘘や冗談ではなく本気でそう考えていることになる。内心はわからないが、少なくとも対外的には。
しかしそれより何より、奏一の言葉には結子が大きな衝撃を受ける仰天の言葉が含まれていた。予想外の事実に、後頭部を鈍器で殴られたような錯覚をする。
(響兄さま……結婚した、の……?)
兄が結婚した、ということは、そういうことだろう。晃一には響一と奏一の二人しか子どもがいない。だから彼の言葉が示す『兄が結婚した』というのは『結子が憧れ続けてきた人がすでに既婚者となっている』という、にわかには信じがたい事実だ。
(う……嘘!? 誰と……? 聞いてない!)
内心で絶叫する結子を余所に、場の会話はどんどん先へ進んでいく。