独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる

「でも仕事をしてる結子を見て考え方が変わった。生き生きしてて楽しそうにお花と向き合う可愛いお姫様は、俺が知らない間に花咲かじいさんになってた」
「ちょっと……? じいさんはないでしょ?」

 奏一の発言に一瞬眉を顰めてしまう。しかしすぐに、彼が『結子は花を咲かせるのが上手な人である』と言いたいのだと気付く。だからじっと見つめ合うと、なんだか急におかしくなってふふっと笑ってしまった。

「ようやく笑ってくれた」
「!」

 ついつい零れた笑みを見て、奏一も笑顔になってくれる。そしてまた、結子の身体をぎゅっと抱きしめてくれる。

「結子の上司は、結子の技術ならその人の期待にも応えられるって判断したから、指名したんでしょ」
「うん……でも応えられなかった」
「それはちがうよ。相手が変だっただけ」

 結子の後ろ向きな言葉はすぐに奏一に掬い取られた。結子はつい、彼は何も知らないから能天気なんだろうな、と失礼なことを考えてしまう。

 だが意外なことに、奏一は結子の状況をちゃんと把握していたらしい。

「そのモデルさんっていうか、女優さん? ってあれでしょ。アルコール飲料のコマーシャルに出てる人。あと先週から公開された映画にも出てない?」
「え、え……っ? あ……っと」
「名前は言わなくていいよ。その反応で十分」

 びっくりして奏一の顔を見上げてしまったのは、さすがに失敗だったかもしれない。クライアントの情報を漏洩するだなんてそれこそプロとして失態だと思う。

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