独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる
しかし奏一は自分の人差し指の先を唇にトントンと当てて、『ナイショにするからだいじょーぶ』と笑ってくれる。そして彼が簡単に答えに行き着くことが出来た秘密も、ちゃんと教えてくれる。
「その女優さん、俺のとこじゃないけど、うちの系列ホテルの政治パーティで酔って大暴れしたことあるんだ。若手の中では有名な女優さんで無碍にも出来ないんだろうけど、裏ではかなーり問題ある人らしいから結子は気にしなくていいと思うよ?」
奏一が涙に濡れた頬を撫でながら、だから大丈夫、と呟く。結子の身体をそっと抱き、気にしなくていいよ、と屈託のない笑顔を向けてくれる。
「……慰めてくれるの?」
「当たり前じゃん。俺、はやく結子に元気になって欲しいよ」
当然だとでも言わんばかりに呟く奏一に、結子はほっと安心した。たどたどしいけれど優しくてやわらかい慰め方に『ありがとう』と呟くと、すぐに『どういたしまして』と微笑んでくれる。
その指先はずっと結子の頬を撫で続けている。もう涙は止まってすっかりと乾いた肌を、何度もふにふにと撫でられる。
「結子は泣いても美人だね」
「美人じゃないけど……」
「じゃあ、可愛い」
否定した言葉はすぐに別の言葉にすり替えられた。どちらかと言うと気が強くて可愛げなんてないだろう自分を可愛いというのは、両親を覗けば奏一ぐらいなものだろう。可愛くない、と言われることはあっても、可愛い、と言われることは全くない。