独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる
花という繊細な植物を扱う職業上、結子は年中水の冷たさに手を晒している。薬品を扱う時は手袋等を使うこともあるが、ちょっとした作業であれば素手のままで花や水に触れることも多い。
季節が秋から冬へ移り変わった今の時期だと、その水も急激に冷たさを増す。冬は水が澄んで雑菌が繁殖しにくく花が生き生きとしている期間が長いので顧客は喜んでくれるが、フローリストの手や肌はどうしても荒れがちになってしまう。
年齢の割にあかぎれと肌荒れが多く、どこかカサカサと乾燥している印象がある。その荒んだ手を奏一に見られるのが恥ずかしい。だから結子は手を隠そうとしたが、引っ込めようとしても掴まれた手は振り解けない。
「奏一さん……? なにしてるの?」
ふと結子の右手を掴む奏一の手が右だけではないことに気が付く。いつの間にか、彼の左手も結子の右手を掴んでいる。そして両方の手を使って結子の手の中央を強めの力でぐいぐいと押してくる。
また何か新しいからかい方を思いついたのだろうか。と失礼なことを考えてしまう結子だったが、どうやらそういうことではないらしい。ふふ、と小さな笑みを零した奏一が、まるでツボを押すようにさらに結子の手のあちこちをぎゅうぎゅうと押し始めた。