独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる

 紙袋に入っているということは、通販ではなくショップで購入したということだ。あんな美意識の高い女子しかいないブランドショップに、立派なスーツを着た見た目の整った青年が一人で入ってきたら店員も他の客もさぞ驚くだろう。

 それに奏一もよく一人で入れたなぁと思う。商品を棚一面に敷き詰めたあの空間には、女子である結子でさえ威圧感を覚えてしまう。

 それほどまでに奏一は結子のために一生懸命になってくれるという事だろうか。

「いい匂い……スミレと……ジャスミン、かなぁ」
「すごい、わかるんだ?」
「うん……精油と生花は違うから、なんとなくだけど」

 十分にマッサージされた手にハンドクリームをゆっくりと塗り込まれ、ほわほわとした気分で呟く。いつの間にか身体から力が抜け、背後の奏一の胸に体重を預けてしまう。けれど彼は結子の脱力を気にした様子はなく、むしろ身体の位置を調節して結子がさらにリラックスできるように広く空間を確保してくれる。

「この前も言ったけど、結子の手は努力してる人の証だよね」

 結子の手をむにむにと触る奏一が感心したように呟く。結子の手を揉み撫で、優しく包み込みながら、先日と同じように結子の努力を褒めてくれる。

< 49 / 108 >

この作品をシェア

pagetop