独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる

「努力するにも才能がいる。俺は一つのことに集中するのがあんまり得意じゃないから、兄さんや結子がいっぱい努力してるのが単純にすごいと思うんだ」
「……奏一さんが努力してないとは言わないけど。……でも、天才なんだなって思う」
「天才?」
「うん。すごく器用っていうか、大体のことはやれば出来ちゃうでしょ?」

 結子はたまに、周りの人がどうして奏一と響一の見分けがつかないのか本当に不思議に思うことがある。

 こういう所もまるで違う。奏一は天才肌で、何をやっても大抵のことは人並み以上の結果を出すことが出来る。すべてをまんべんなくこなせるタイプだ。

 対する響一は生粋の努力家だ。結果的になんでも出来ることは同じだが、努力を怠らず、必ず万全の準備をした上で結果を出す。おそらく何の用意をしなくても問題がないだろうことにも絶対に手を抜かないという、完璧主義な人だ。

「まあ、そうだね」

 結子の指摘に、奏一が苦笑して頷く。天才と言われても否定も謙遜もしないところが彼らしい。

「私、小さいときは奏一さんが苦手だった。私が一生懸命頑張ってようやく出来ることを、なんでも簡単に出来ちゃうから。それに響兄さまにも……」

 結子が奏一を苦手――というより嫌いだった理由は、自分に対するいじわるとからかいが不快だっただけではない。結子が大好きだった響一に対して、なんの遠慮もしないところ……兄の努力を無視する姿がなによりも理解できなかった。

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