独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる

「響兄さまは愛想は良くないかもしれないけど……でもいつも一生懸命で、勉強もスポーツも習い事もいっぱい努力して、前向きに考える人だった。それを飄々と追い越してく奏一さんを見て、この人無神経だなって思ってた」
「いや、うん……まぁ、そうなんだよね。当たってる」

 結子の言葉に、奏一がさらに苦笑する。

 周囲の人々は二人を『優秀な兄弟』と評価するし実際にその通りなのだが、よくよく観察するといつも奏一が勝ち、響一が負けている。この微々たる差であって絶対的な優劣は、結子の知る限り一度も覆ったことがない。

 そして響一は、密かにその結果を悔しがっていた。寝る間を惜しんで勉学に励み、自分の時間を浪費して所属する部活動やチームに貢献し、習い事の練習時間も決して削らない。懸命に、ひたむきに、前向きに努力する。

 なのになぜか、いつも適当にふらふらしている奏一にあと一歩のところで勝てない。口にしたことを聞いたことはないが、彼は相当悔しく悲しい思いをしていたはずだ。

「その所為で俺、兄さんに怒られたことあって」

 以前はよく目にしていた響一の物憂げな表情を思い出していると、奏一がぽつりと呟いた。

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