独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる

 それにこれは、二人の中ではすでに片付いている問題のはずだ。結子の目から見た彼らは、今も昔と変わらず仲の良い双子の兄弟に見える。時に協力し合い、信頼し合い、互いに笑顔で話している姿を目にすると、今は何のしこりも残さずちゃんと仲直りが出来たのだと思える。

「清廉潔白な人なんだよね。威風堂々っていうか、ライオンとかトラっぽいイメージない?」
「ある。なんか土台がしっかりしてる感じ」
「そうそう。兄さんと俺は積み重ねてきた努力の質が明らかに違う。……結子はきっと、それを感覚で理解してるんだよね」

 奏一の言葉を肯定すると、背後で短いため息が聞こえた。添えられていた手が再びぎゅっと握られ、お腹に回された腕にも力が入る。

「だから結子が兄さんを尊敬して好きになるのは、当然なんだ。俺なんかじゃ勝ち目がないことも、わかってたんだけど……」
「……奏一さん?」

 ふと奏一の声が小さくなる。しゅん、と沈んだ声と結子の身体を抱く力に、一抹の不安を覚える。もしかして奏一はなにか悩んでいるのだろうか――

「でも結子はもう、俺のものだから~」

 と思ったら、急に首の後ろに口付けられた。その唐突な態度の変化とくすぐったい刺激に驚いて『ひゃあっ』と情けない声が出てしまう。びっくりした拍子に後ろを振り返り、にこにこしている奏一の肩をペンペンと叩く。

< 53 / 108 >

この作品をシェア

pagetop