独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる
「それ、今言うか!? なんで今まで報告しなかったんだ……」
『……。……――! ~~!』
「いや、もうそれ大問題だろ……」
『~~。~~! ……! ……っ――、!』
「ああ……うん、もういいよ。じゃあそっちは他に回してもらって……わかった。手配させる」
電話の相手が話している言葉を正確に聞き取ることは出来ない。だが相手も相当焦っているらしく、奏一に何かを懸命に訴えていることは感じ取れた。
きっと何か問題が起きたのだろう。顔を見るだけで理解できる。珍しく眉間に皺を寄せて忌々しそうな顔をした奏一が、暗い表情のまま盛大なため息を吐く。
「ごめん、結子。俺ちょっとトラブルが起きて今から仕事に行くことになった」
「え……? だ、大丈夫……?」
「うん。……なんとかするから平気」
結子の困惑の声を聞いた奏一はハァと息を一つ吐くと、そのままベッドから出て立ち上がる。
全裸だった彼は傍に落ちていた下着を拾って身に着けると、部屋の奥にあるクローゼットからシャツとネクタイとスーツ一式を選び、それもテキパキと身に着けていく。
しかしその背中はどこか覇気がない。朝日に照らされる表情もなんとなく沈んでいて、とても『平気』には見えなかった。
結子もいつまでも全裸でいる訳にもいかない。彼が後ろを向いている隙にショーツとブラジャーをベッドの中に引き込んで、布団の中でもぞもぞと身に着ける。