独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる
明るい場所で裸を見られるのが恥ずかしいので小さな努力をする結子だったが、小動物の巣作りのようにもぞもぞと身支度をする結子が可笑しかったらしい。奏一がほっと気の抜けた笑顔を見せる。
「……今日うちのホテルで一件、ウェディングパーティの予定があるんだけど」
「え……?」
「担当予定だったフローリストが急遽来れなくなって」
そして気が抜けたついでに、心配する結子にも事情を教えてくれる気になったらしい。靴下を履きながらぽつぽつと話す奏一の言葉に、結子は驚きの声を上げてしまう。
「ええ……? 体調不良ならそのショップとか事務所から、他の人が代わりに来るでしょ? フリーランスなの?」
「いや、違うんだけど……」
ウェディングパーティの会場を飾り付けるフローリストやデザイナーも人間なのだから、突然体調不良になったり、本人や身内の事情で仕事に穴を開けてしまうこともあるだろう。しかしそうなれば、普通は代わりの人がやってくるはずだ。
もちろんこれが、個人事務所や単独で活動する完全なフリーランスならば、代わりは用意できないかもしれない。けれどブライダルサロンを併設するホテルが……特にイリヤホテル東京エメラルドガーデンという母体が大きなホテルの取引先が、たった一人のフリーランスのみとは考えにくい。
だったらその来れなくなってしまった人の代わりに、当該のショップや事務所から他の人を派遣してもらえばいい。そうすれば大きな問題にはならないはず。結子はそう考えるけれど。