独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる
結子が再度頭を下げると、二人はもう一度結子にお礼を言い、ブライダルスタッフと共に会場を一旦後にしていった。
華やかな衣装に着替えるための背中を見送って完全に姿が見えなくなったことを確認すると、ホール前のホワイエにあるソファへ腰を下ろす。
「はあぁ……なんとか間に合った……」
座った瞬間、盛大なため息が出た。
正直、間に合わないと思った。
今日は休日でも祝日でも金曜日でもない、週のど真ん中のふつうの平日だ。ブライダル業界では、こういう何もない平日の結婚式やパーティの費用を割安に設定していることが多い。
今日の花嫁と花婿は、シフト制の職場に勤める者同士だった。だから本人たちも招待される職場の人たちも、休日より平日の方が参加の調整しやすい。遠方からのゲストも少ない。費用も抑えられる。
それならば、と規模を縮小し、エメラルドガーデンで二番目に小さいホールでも十分に事足りる小さな挙式とパーティを選択した。だから急遽代役フローリストを担った結子でも、どうにか間に合わせることが出来た。
しかし結子の仕事は終わったが、主役の二人にとっての本番はこれからだ。まだ気は抜けない。
とりあえず朝から何も食べていないので、時間までラウンジか近くのカフェで休憩でもして腹ごしらえをしよう。
そう思ってソファから立ち上がったところで、ブライダルサロンへ続く階段から一人の男性がホワイエへ降りてきた。
「お疲れさまでした」