独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる
中にはセクシャルハラスメントという表現では済まされない、犯罪一歩手前の被害を受けた人もいるという。
思い出すだけで結子の背筋も震え上がってしまう。それほど上野の目つきや手つきは気持ち悪いものだった。
そして約半年もの間そうした状況が続いていたにも関わらず、今日という日まで事が露呈することはなかった。
その理由は、上野が被害相手に契約の打ち切りをちらつかせていたから。上野がブライダルサロンの責任者という強い立場にいたから。
若い女性スタッフたちはイリヤホテルグループという大きな取引先を失うことを恐れて、きっと上司にも同僚にも誰にも相談できなかったのだろう。それにもしかしたら、契約云々ではなく女性の尊厳を奪うような脅し方もしていたのかもしれない。だから皆、限界まで我慢していたのかもしれない。
思い出すと結子の方が腹立たしくなってしまう。結子は長期の取引関係はないので、この際あの気色悪い顔を一発殴っておけばよかった! と考えてしまう。
まぁ、実際にはその場で震えるだけで何も出来なかったのだけれど。
「折角の休みだったのに、散々だったね」
「うん……」