独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる
2. 兄の方でお願いします
どこから文句を言えばいいのかさえわからない結子は、そもそもこんな状況になった原因を目の前の人物に問い出したくなった。
「普通、お見合いって会った事ない人が会うものよね……? 知り合い同士でお見合いなんて、一体どういうつもりなの?」
もちろんそれを言うなら、元から顔見知りである響一も同じだ。彼との見合いだと思ってやってきたのだから、結子も決して人の事は言えない。
だがわざわざ『嫌いなはずの』結子を見合いの席に呼びつけた入谷家……もとい奏一の真意を知りたくて、ついそんな問いかけをしてしまう。
敬語を引っ込めていつも通りの口調に戻ったのは、彼を相手に淑やかな態度でいる必要はないから。父の手前、晃一の前では大人しく上品に振舞うが、彼らの目が届かない場所でも奏一相手に丁寧に接する必要はない。
「だって大人の都合に付き合わされた『子ども』として会ったことはあるけど、大人の『男女』として結子に会ったことはないでしょ」
そしてそれは奏一も同じ。口調とともに正座を崩して胡座になっても、長い脚だと様になるのが小憎らしい。
「……どういう意味?」
「そのままの意味だよ。親を含めて頭の固い人たちを納得させるなら『見合い』は合理的だ。最初から両家の賛同があればその後の準備や手続きもスムーズだし、理由付けもしやすいし」
「はぁ……?」