独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる

「私が失敗したら慰めてくれるのに、私には慰める権利もくれないの!?」
「そうじゃない、けど……」
「それじゃあ奏一さんを心配してる私の気持ちはどうなるのよ!」

 そう。仕事で失敗したからと言って、奏一がすべて一人で抱え込む必要はない。奏一には優秀な部下も、仕事仲間も、他の経営者も、頼れる双子の兄もいる。

 そして奏一には、結子がいる。

 悲しいことがあっても、苦しいことがあっても、辛いことがあっても、うちに帰ってくれば結子がそれを慰められる。分かち合って寄り添い合える。解決は出来ないかもしれないけれど、愚痴や悩みならいくらでも聞いてあげられる。

 だから一人で落ち込む必要はない。
 人で抱え込む必要はない。

 もっと結子を、頼って欲しいのに。

「もう知らない!」
「結子……っ」

 踵を返すとリビングを後にして寝室へ駆けこむ。そしてそのまま、ベッドの中に潜り込んでしまう。

 奏一に喝を入れるつもりだったのに、気が付けば結子の方がポロポロと泣いてしまっていた。

「うー……」

 枕を抱き寄せて、どんどん零れて来る涙を何度も拭う。

 奏一はずるい。自分は結子の事をいっぱい甘やかして慰めてくれるのに。仕事を頑張る結子の手が好きだと言ってくれるのに。甘えさせてくれるのに。

< 82 / 108 >

この作品をシェア

pagetop