独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる
けれど断るつもりだった結子に対し、奏一はどうしても一緒に食事をしたいと言い募る。
顔を覗き込まれて奏一にじっと見つめられた結子は、咄嗟にそれ以上の言い訳が思いつかなかった。
だから結局『もう遅い時間で人も少ないから、ゆっくりできると思うよ』と笑う彼に背中を押され、レストランのある十六階へ向かう事になった。
「わぁ、すごい……! 綺麗……!」
しかしまったく気乗りしなかったはずなのに、レストランの窓際の特等席に案内された結子は、直前までの憂鬱も忘れて感嘆の声を上げてしまった。
景色そのものは見慣れた都心の夜景である。けれど冬の時期になり空気が澄んでいるせいか、クリスマスに合わせて街中にイルミネーションが点灯しているからか、夜景の輝きがいつもより増して見えた。
磨き上げられた一面ガラス張りの向こうに美しい夜景を眺めていると、奏一が食事の席に用意されたイスを引いてくれる。
丁寧なエスコートに導かれるようにそこに座ると、奏一もすぐに向かいの席へ腰を下ろした。
「結子」
席についた後も綺麗な夜景に見惚れていたら、奏一にそっと名前を呼ばれた。
その声に反応して外の景色から視線を外す。そのまま奏一の顔を見つめた結子は、ふと彼の手がテーブルの上に置かれていることに気が付いた。
彼の手の指し示すものを目で追った結子は、やがて意外なものの存在を見つけ、驚きに目を見開いた。