恋のチャンスは3日間
「もしもし」

『俺』

「うん、どうしたの?」

電話を耳に当てながら、ベランダにでる。

少し日差しが強いけど、風が心地いい。

『どうしたって、あれからどうなったかなって思って。』

「ああ、うん」

『先輩帰った?』

「えっと、まだいる」

『え?まだいるってどういうこと?』

「私にも良くわかんないんだけど、もう一泊して言って良いかって言われて」

『で、いいよ。って言ったんだ』

「うん、断る理由見つからなくて」

『そっか。で、昨日、あれからなにかあった?じゃなきゃもう一泊とかないよな?』

そう来るよね。

だけど、どこまで素直に話たらいいのかな。

「別に、これと言って特には」

『あれからずっと先輩寝てた?』

「ううん、一回起きて、一緒にお酒飲んで少し話して・・・別々に寝たけど」

『は?夜中に一緒に酒のんで、なんもなし?』

「ないよ。あるわけないじゃん」

『いい年の男と女が酒のんで、ひとつの部屋にいてなんも無し?』

「だから無いってば。だいたい郡司さんは李奈を気に入ってるって言ってたのに、私に手を出すわけないじゃん」

『え?先輩本人が李奈のこと気に入ってるって言ったのか?』

「・・・そうだよ。たけちゃんも言ってたじゃん。私には手を出さない人だって」

『そうだけど・・・でもさ』

「とにかくなんにも無いから。ライバル減らなくて残念だったね」

嫌な言い方。
完全にやつあたりだ。

『そんなこと思ってねーよ』

「わかってる。・・・私は李奈みたいに綺麗じゃないし、女に見られてないことはわかってる。だから郡司さんは手を出されないんだって。李奈が羨ましいよ。たけちゃん。私が李奈だったら今ごろ・・・『おいっ』

たけちゃんの声でハッとする。
最悪。愚痴っちゃった。

『華央。お前なに言ってんだ?どうやったってお前は李奈にはなれないだろ』

・・・そうだよ。
わかってる。そんなこと。・・でも

「この状況わかる?幸せなのに辛いこの状況たけちゃんにわかる?李奈になりたいって思う私の気持ち、たけちゃんにわかるの?」

『だから、そう思うこと事態が無意味なんだよ。わかってねーのは華央の方だろ』

は?なに言ってんのか意味わかんない。

『お前は華央であって、李奈じゃない。李奈になる必要なんてない。人を羨む気持ちは俺だってわかるよ。自分にないものを持ってて、自分の好きな人がその人を好きだって言ったらその人になりたいって思う気持ちはわかる。でも、思ったところでどうしようもないだろ?』

たけちゃんは・・・正しい。
だけど、今の私には正論はきついよ。

『それよりも俺は華央が華央らしく先輩と向き合えればいいと思ってる』

「私らしく・・・」

どんなのが私らしい?

『・・・告白しないのか?』

カチン。

「できないよ。出きるわけないじゃん!だって郡司さんは・・・『だからさ、相手の気持ちなんてどうでもいいだろ!』

「え?なに言って」

『華央は相手の気持ちを考えすぎなんだよ。だからわからなくなるんだよ。気持ちをただ伝えるだけだ。先輩の気持ちがどこにあるかじゃなくて、華央がどうしたいか、が、大事なんだよ。お前はこの先ずっと先輩を眺めて終わりたいのか?・・・こっちは2年も華央がしてる片想いみせられりゃ、応援だってしたくなるんだよ。華央が本気なんだってわかるから。だけどそれには華央が1歩自分で踏み出さなくちゃダメだろ』

だって。

『俺は今がその踏み出すチャンスだと思ってる。あの日ホテルが一杯で泊まれなかったことも、華央がアパートでいたことも先輩があんまり寝てなくて酔いつぶれたことも。きっとこれがチャンスなんだって思った』

え?

『だから、連れてった。確かにホテルも空きがなくて一番近い知り合いも華央だったって言うのは本当だけど、先輩じゃなきゃ華央のところに連れていったりしないし、置いて帰ったりしないよ。それにな、華央は李奈になりたいって言うけど、李奈も華央になりたいって言ってたよ』

「え?李奈が?私に?」
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