恋のチャンスは3日間
名残惜しいが、ベッドから出て洗面所へ向かう。
顔を洗って、歯を磨く。
いつも常備している髭剃りで髭を剃ったあと、キッチンに向かった。

時刻を確認したら9時。
久しぶりに良く眠れたからか、体が軽い。

こちらに背を向けて寝ている森下を、愛しいと感じながら、朝食を作ることにした。

朝食が出来上がって、コーヒーを一口飲んだところで、森下がもそもそと動く。

「おはよう」

声を掛けると、寝ぼけ眼で

「おはようごさいます」

と優しく微笑む。
ああ、今すぐ抱き締めたいと思った。
こんなに心って変わるものなのかと、自分で自分の思いに戸惑う。

準備が終わって戻ってきた森下に

「勝手にキッチン使ってごめんな」

謝ると

「いえ、全然。私こそ寝坊して郡司さんに用意させてしまってごめんなさい。いただきますね」

本当に優しいんだよな。
・・なんでこんなに許してくれるんだろう。
心がほっこりする。

「・・その・・腕いたくない?」

聞いてもいいかと思いながら、森下の反応が見たくて。
意地が悪いな俺も。

「あ、ああ、だ、大丈夫です・・・」

そりゃ、挙動不審にもなるよな・・・予想通りな反応に嬉しくなったり。

「悪かったな」

ほんと申し訳ない。

「いえ、こちらこそすみません。勝手に隣に寝ちゃって・・・」

照れんなよ。こっちまで恥ずかしくなるわ。
なんだよ、可愛いいな、森下。

「いや、俺が離さなかったんだろ?たまにやるみたいだから。無意識なんだけど。嫌な思いさせて悪かった」

ほんとこればっかりは・・・俺の意思とは関係なしに人のどこかを掴むらしい。
不安の表れなんだと思う。
これで今までの彼女とは結構揉めた。

そう、俺が振られる原因はほとんどがこれ。

最初は驚きながらも受け入れてくれるんだけど、徐々に怖さに変わっていくんだと・・・それが重くなるんだと、言われたことがある。

森下はどう思ったのだろう。
彼氏でもない、ましてや好きでもない男に腕を掴まれて恐怖すら感じてもおかしくはない。

「え、いえ、とんでもないです。別に嫌でもなかったですし。私もなんだかすぐに寝ちゃったみたいですし・・」

え?嫌じゃなかった?

「そうか・・・」

そんなわけ・・・でも、だけど・・・。

もし、森下が許してくれるなら、もう一回試したい。
だって、こんなにぐっすり眠れたことなかったからだ。
まして抱き締められて起きるとか、初めてだ。
今までは心配する彼女を、俺が抱き締めて寝ることが当たり前だったから。

さすがに怒られるか。
嫌がられるか。
どっちにしろ理由がなければ、今日帰ることになるんだし。

・・・一か八か。
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