捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】
狼王子と甘く蕩ける初夜を ⑵
いつしかクリスは夜着を脱ぎ去っていた。おそらくお得意な魔法によってだろう。
気づけば私も上下ともに下着を取り払われており、お互い何も纏っていない、生まれたまんまの姿だ。
因みに、クリスの狼獣人の姿には二つのタイプがあって、一つは王都で見た、もふもふとした毛で覆われた大きな狼の姿。もう一つは、人の姿にケモ耳と尻尾のみがある姿だ。
今のクリスは、ケモ耳&尻尾のみの姿である。
なので、芸術的な彫刻かと見紛うほどの美しい肉体美が露わになっている。
何にも隔たれることなく身を寄せ合うようにして、クリスの逞しい胸板と私のささやかな胸とが密着し、互いの素肌が隙なく重なりあっている。
ただそれだけで、これ以上にないほどの安堵感と幸福感に満たされる。
あたかも本来自分のあるべき所におさまっているかのような、そんな錯覚さえ覚える。
元いた世界での事も、この異世界での事も。そのすべては、ここへ辿り着くためのものだったんじゃないかと思ってしまうほどに。
本当に何もかもがしっくりとくる。
ーーやっぱり私とクリスとの出会いは運命だったのかも。
クリスの逞しい腕によってふわりと包み込まれている腕のなか、思考に耽っていると。
私と同じように思っていたかは不明だが……。
クリスは、こうして傍でいられる喜びを噛みしめるかのように、ぎゅっと私の身体を抱きしめたまま動かずにいた。
そんなクリスから唐突に、ちょっぴり拗ねたような声音が重なりあった素肌からじんわりと伝わってくる。
「僕がこんなにも余裕をなくしているというのに……。ノゾミはずいぶん余裕なんだね」
ーーそんな声でさえもどうにも愛おしくて堪らない。
王都でのあの夜の甘やかな快感を知っているせいか、身体の芯がキュンと切ない音を奏でた。
クリスに一刻も早く触れて欲しいと乞うように。
また、その感触が羞恥を掻き立てて、カッと全身が紅潮する。
そこにクリスのふっと軽やかな笑みを零した音が聞こえて、続けざまに、今度はいつもの優しい甘やかな声音が耳元に届いた。
「余裕だと思えば、こんな風に、僕の言動ひとつで途端に真っ赤になって余裕をなくしてしまう。本当にノゾミは愛らしいね。そういうところも堪らない」