捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】
淫夢のなかで
でもこの日見た夢はいつもとは違っていた。
勿論、野々宮先輩が途中からレオンに取って代わったのもある。
けれどもそれだけではなかった。
途中から野々宮先輩がただ単にレオンに代わったのではなく、視界がチカチカと明滅し、それに合わせて野々宮先輩とレオンの姿とがシンクロするように重なって見えはじめたのだ。
途中からどちらに翻弄されているのかわからなくなってゆく。
頭は混乱しているのに、感覚はやけに研ぎ澄まされていた。
夢であるはずなのに、本当に交じり合っているかのようなリアルさだ。
夢の中の私は、野々宮先輩に熱い眼差しで見つめられていた。
それだけで胸はドキドキと忙しなく高鳴って、顔も身体も熱を帯びてゆく。
そんな私のことを野々宮先輩は愛おしそうに眇めた瞳で見つめふっと柔らかく微笑んでいた。
そうしてゆっくりと耳元に顔を埋めてきた野々宮先輩に、これまで一度も耳にしたことのなかった、なんとも優しい甘やかな声音で。
『ノゾミ、好きだよ……なんて言葉では言い尽くせないほどに、僕は君を愛している。初めて会ったときに直感したんだ。君は僕にとって特別な女性だと。ねえ、ノゾミ。僕のこと嫌い?』
耳元を熱い吐息で擽るようにして囁きを落とされて。
あれ、こんなに丁寧な口調だったっけ?
それに今日は『俺』じゃなくて『僕』なんだ。
なんだか王子様みたいでちょっと新鮮かも。
違和感を覚えながらも、野々宮先輩には違いないので、なんの躊躇もなく私は首を左右に振って応える。
それを見遣った野々宮先輩は、心底嬉しそうに、薄くて形のいい唇で弧を描いていた。
そうしてそのまま私の唇へとそうっと触れるだけのキスを降らせた。
徐々に徐々に、優しく啄むだけだったキスが深いものになってゆく。
やがて唇の微かな隙から野々宮先輩の熱くねっとりとした舌が咥内へと挿し入れられていた。
咥内を探るようにゆっくりと歯列をなぞられたあと、口蓋をチロチロと擽られているうち、しだいと身体からは力が抜けてゆく。
くたりとした私の身体に、野々宮先輩のしなやかな腕がふんわりと包み込むようにしてしっかりと巻き付けられる。
あたかももう何があっても離したりしないというように。
いつしかベッドに隣りあって座っていた私は、野々宮先輩の広くて厚い胸板に抱き寄せられ、自然に寄りかかるようにしなだれかかっていた。
野々宮先輩の腕の中、甘やかなキスに酔いしれていると、先輩の大きな掌に胸の膨らみを衣類の上から持ち上げるようにして包み込まれていて、無性に恥ずかしさを覚える。