捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】
淫夢のなかで王子様と!?
優しくて甘やかで、けれど私のすべてを食らい尽くすかのような、あたかも飢えた獣が狙った獲物を仕留めようとするかのような。
例えるならば、そんな、なんとも情熱的で獰猛な劣情を孕んだような熱い眼差し。
野々宮先輩の初めて見せる、雄を思わせるような、その姿に、不思議と怖さは微塵も感じない。
怖いどころか、早く野々宮先輩に食らい尽くして欲しい。なんてことを心から願っていた。
これまで誰にも晒したことのなかった、身体の一部始終を熱くて強い眼差しで見つめられ。
肌がじりじりと焼けつくように熱く滾ってゆく。
その熱を辿るように野々宮先輩の熱くざらついた舌や形のいい柔らかな唇が、滑らかな柔肌を這い回る。
触れられたところからひんやりとした感覚がする。
けれどあとからすぐに甘やかな痺れが追いかけてきて、やがて滾るような熱を孕んでゆく。
その熱が全身に及ぶ頃には、私の身も心もとろとろに蕩けてしまっていた。
どこもかしこも敏感になっていて、少し舌を這わされただけで、全身が慄いてしまう。
なんとも恥ずかしくてどうしようもない。
思わず野々宮先輩の視線から逃れるようにして横に顔を背けていた。
そんな私の反応に、野々宮先輩は満足そうに、眇めた瞳で見つめつつ。
『あぁ、僕のノゾミ。君はなんて可憐で美しいんだ』
背けた私の顎を指でそうっと上向かせながら、歯の浮くような台詞を囁いてくる。
いつの間にか溢れていた涙が滲んで微かにぼやけた視界のせいか、先輩にキラキラとしたエフェクトでもかかっているかのように輝いて見える。
粉々に砕いた宝石の粒をちりばめたような、キラキラとしたオーラのようなエフェクトを纏った先輩の姿は、あたかも王子様のよう。
そういえば、小さい頃から絵本を読むのが好きだった私は、シンデレラに登場する王子様に憧れていたんだっけ。
大人になったら、シンデレラのように素敵な王子様に見初められて、いつまでも幸せに暮らしたい。そんなことを夢見ていた。
でも現実は、そんな夢とは程遠いもので。
いつしか私は、来る日も来る日も勉強に追われるようになっていた。
テストで結果が出るたびに、九十九点であろうと満点でないと、褒めてもらえず。
お兄ちゃんのように、いつも満点を取れない私は、ダメな子なんだ。
いつしかそう思うようになっていった。
両親に褒めてもらうためには、もっともっと頑張らなきゃ。
小学三年生の頃には、そう思うようになって、シンデレラのようになりたい。なんて夢、今、思い出すまで、スッカリ忘れ去っていた。
それが今、目の前には、王子様のような野々宮先輩がいる。
ーーあー、本当に、夢みたい。