捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】
夢に見た王子様現る!?
誰かの腕の中にすっぽりと包み込まれているような、そんな心地がする。
あたたかくてとっても心地がよくて、凄く安心できる。
まるでゆりかごのよう。
いつまでもいつまでも微睡んでいたくなってしまう。そこに。
「ノゾミ」
なんとも耳に心地いい甘やかな声音で名を呼ばれ。
ーーこの声、もしかして夢に出てくる王子様? あぁ、また夢を見てるんだ。
淫夢に登場する王子様の声に、当然夢を見ているのだと思い込み目を開けてみると。
「ノゾミ、大丈夫? どこか痛いところはない? 頭とか打っていない?」
とっても心配そうに矢継ぎ早に問い返してくる淫夢に登場してくる先輩に瓜二つの王子様の姿がそこにはあった。
けれどそこにいたのは王子様だけじゃない。
王子様の隣には、同じく心配そうな顔をしたルーカスさんもいる。その傍らには、いつものようにフェアリーもピクシーもいた。
皆一様にベッドに横になっている私のことを心配そうに覗き込んでいる。
どうやらいつものあの淫夢ではないらしい。
けれども、一体なにがどうしてこんなことになっているのかがさっぱりわからない。
寝起きというのも手伝って、正常に働かない頭は大混乱だ。
「ちょっと、待って。私、まだ夢の中なの? それとも頭が可笑しくなっちゃってるの? なにこれ、夢と現実がごちゃ混ぜになってる。もー、ヤダッ! 誰か助けてーー!」
寝起きでパニックを起こしてしまった私は、頭を両手で抱え込んで大声を出すなり布団の中に潜り込んだ。
すぐに皆が心配しておのおの声をかけてくれていたけれど、それに何かを返すような余裕などなかった。
少しして目も完全に醒めて落ち着を取り戻した頃。
ルーカスさんの優しい声音が耳に流れ込んできて。
「ノゾミ様。ご安心くだされ。この若者は、倒れたノゾミ様を連れ帰ってくれたレオンですじゃ。否、正確には、レオンは仮の姿で隣国からきた旅人だそうですじゃ。わしが以前お伝えしました、ゴブリンの呪いで、変身魔法が解けなくなっていたそうですじゃ」
思いもよらなかった言葉に驚き、飛び上がるような勢いで布団から顔を出す。
そうして続けざまに混乱気味に私が放った、
「え? レオンが旅人? それに変身魔法ってどういうことですか?!」
という問い掛けに対して応えてくれたのは、ルーカスさんではなく先輩に瓜二つの王子様もとい、隣国の旅人だった。