捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】
まさかの追放!?
一体、ここがどこなのかも、どういう状況なのかも理解できずに、目をぱちくりさせるしかない。
そんな私の眼前に、一歩歩み寄ってきた小柄ながらに恰幅のいい中年男性が感嘆の声を上げ、『殿下』とやらに対してなにやらお伺いを立てている。
「おう、今度こそ召喚成功でございます。殿下、いかがでございましょう?」
中世のヨーロッパのお城を思わせるような豪奢な内装に、外国かと思ったが、言語が理解できるので、どうやら日本ではあるらしい。
ーーそれにしてもリアルだなぁ。映画かドラマのロケとかに使うセットだろうか。
キョロキョロと忙しなく辺りに視線を彷徨わせていた私の耳に、今度は、別の男性の声が届いた。
「確かに、俺好みの可憐な顔立ちをしているようだが」
気だるげに放たれたその声の主に意識を向けると、深紅の絨毯が敷かれている雛壇のようなものがあり。
そこに設えられている立派な玉座で、足を組んでふんぞり返っている、これまたおとぎ話に登場しそうな、王子様然とした衣装に身を包んだ美青年の姿が見て取れる。
顎に手を添え難しい顔で何やら思案しているようだ。
明るいブロンドのロングヘアを後ろで結わえた彫りの深い顔立ちに碧眼の、ハリウッド映画に登場する俳優のようなイケメン。
ーーメチャクチャ格好いいけど、なんか感じ悪。
そんなことを思っていると、すっくと立ち上がった『殿下』と呼ばれた美青年がこちらへ颯爽と近づいてくる。
そうして眼前までくると長身を屈めて、私の顎先を指で捉えて上向かせ、「立ってみろ」と命令してきた。
ーー綺麗な顔してるし、偉い人みたいだけど、やっぱり感じ悪い。優しい野々宮先輩とは大違いだ。
とは思っても、ここは、従っておいた方がよさそうだ。そう判断し言われた通りゆっくりと立ち上がってみる。
痛みもないし、ケガもしていないことに、生きているようだとホッと安堵する。
そんな私の頭のてっぺんから爪先まで品定めするように眺めると、渋い顔をした『殿下』が信じられないことを口にした。