捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】
その甲斐あってか、午前中には、今日のノルマだった薬草を探し終え、午後からは自室にこもって下着の開発に取りかかることができている。
一つしかない貴重な下着を手に取り、フェアリーに以前教えてもらった、王族をはじめとする貴族の女性が愛用しているという、リネン製のコルセットのことを思い浮かべていた。
中世のヨーロッパなどで使われていたというのは、何かの本でも読んで知ってはいたが。
私のイメージでは、一人では着用できない上に、締め付けがきつくて、とてもじゃないが普段着としては不向きに思えた。
けれどもその材料を使ってブラジャーに近いものが作れるかもしれない。
ただ問題なのは、追放された聖女ということで、追われる身である私には、この精霊の森から出ることはできないということだ。
ルーカスさんに買ってきてもらう手もあるが、そうすると、追放された聖女をかくまっているんじゃないかと、豪商らに勘ぐられてしまうだろう。
ただでさえ、精霊の森に住んでいることで、これまでも私のことを幾度となく聞かれているらしい。
なので一向に下着の開発は進んではいなかった。
ーーあーあ、レオンみたいに『変身魔法』とやらが使えたらいいのに。
私に使える能力ときたら、チープなものばかりだ。
頭を抱えた私は丸テーブルに突っ伏したまま項垂れていた。
コンコンコンーー
ちょうどそのタイミングで部屋の扉をノックする音が鳴り響く。
こんな風に律儀にノックなんてするのはレオンくらいだ。
ガバッと顔を上げた私は、ブラを両手でお腹に抱え込むことで隠してから、「な、なに?」慌てて返事を返した。
それに対してレオンからは、意外にも深刻そうな声が戻ってきたために、
「ノゾミに話しておきたいことがあるんだけど、少しいいかな?」
「ど、どうぞ」
そう言って応えるほかなかった。
それに、その『話しておきたいこと』というのは、おそらく、レオンが隠している事についてに違いない。
だっから、聞いてスッキリさせたい。そう思った。
そうして現在は、部屋に入ってきたレオンと丸テーブルを挟んで対峙しいるところである。
ほとんど毎日のように薬草探しを一緒にしてはいるが、こうして部屋にふたりきりというのは、初めてかもしれない。
そう思ってしまったせいか、これまで連日のように耳にしてきた甘い台詞が脳裏に次々に蘇ってきてしまう。
私の胸の鼓動と緊張感は最高潮に達しようとしていた。