捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】
淫夢と同じシチュ!?
だからできるだけ早く話を終わらせて部屋から退散して欲しいのに……。
レオンときたら、不躾に部屋のあちらこちらに視線を気遣わしげに逡巡させるばかり。
別に、見られてまずいものなどない。
ないけれど、そんなに見られているとどうにも落ち着かない。
なんだか心の中を見透かされそうだっていうのもある、
それに加えて、あの淫夢のなかで繰り広げられていた不埒なあれこれがぶわっと蘇ってきてしまう。
ただでさえ、連日のように甘い言葉を囁かれているのだ。
淫夢と同じ状況になってしまうんじゃないかと、警戒してしまうのも当然だろう。
いくら片想い中だった野々宮先輩に瓜二つだからって、野々宮先輩じゃないのだ。
どんなに甘い言葉を囁かれていようが、そんな口先だけの軽い言葉を信用できるはずもない。
ーーここは毅然とした態度で対応して、拒絶の意思をしっかりと示しておかなければ。
意を決した私が早く本題に入ってもらおうとして出した声は、おもむろに立ち上がり、感慨深げに放たれたレオンの声に掻き消されてしまうこととなった。
「ねえ、レオンーー」
「それにしても懐かしいなぁ。ここでノゾミと一緒に二月余りもの長い間抱き合って眠っていたなんて。なんだか夢のようだよ」
「////ーーッ!? だ、抱き合ってたなんて、変な言い方しないでッ!」
しかも第三者が聞いたらあらぬ誤解を招きかねない言い草だ。
途端に、羞恥を最大限に掻き立てられてしまった私は狼狽えつつも、レオンに非難の声をあげたのだった。
その様子をレオンが眩しそうに綺麗なサファイヤブルーの煌めく瞳を眇めて見つめ返してくる。
「ノゾミは本当に初心で愛らしいなぁ」
そうして懲りもせずにやっぱり甘い台詞を投下する。
「////……だから……揶揄わないでって言ってるじゃない」
無駄だとは思いつつも、羞恥に塗れながらそんな言葉を放つしかなかった。
ーー意識するもんか。
そう思うのに、心とは裏腹に胸の鼓動は尚も忙しなく加速してしまう。
これ以上加速したら、壊れてしまうんじゃなかろうかと懸念してしまうほどに暴れ回っている。
そこにまたレオンの甘やかな声音が投下されてしまった。
「心外だなぁ。前にも言ったと思うけど、僕はいつだって真剣だよ。行き倒れて、このままここで朽ち果てていくのかと覚悟した矢先に、救ってくれたノゾミが僕には女神のように神々しく輝いて見えたんだ。この世の者とは思えぬほどに美しいノゾミに僕の身も心も奪われてしまったんだよ」
「////ーーッ!?」
やけに熱のこもった熱い眼差しで見つめられてしまうと、どういうわけか魔法にでもかかったように瞬きどころか身動ぎさえもままならない。