捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】
突然の宣言とキス
あり得ないほどの羞恥に塗れあわあわすること数秒。
恍惚の表情でうっとりとブラを眺めていたレオンがキョトンとした顔で私のことを見遣ってくる。
「ノゾミ、大丈夫?」
これまではわかりやすく、先輩と瓜二つというような言い方をしてきたけれど。
いわゆるイケメン顔だった先輩の顔立ちは純和風だった。
その要素に、西洋人特有の彫りの深さと煌めく宝石を彷彿とさせるサファイヤブルーの瞳と、アッシュグレーのゆるふわロングという要素が加わっている。
それだけじゃない。
元いた世界とは違って、食べ物だって美容だって、充実してはいないというのに、何を食べるとそんなきめ細やかな陶然とした透き通る肌になるんだろうと思うほどに、美しい肌に美しい髪。
まるでファッションモデルのような、なんとも羨ましいビジュアルをしている。
そして極め付きだったのが、このなんともいえない甘やかな声音。
それらを総動員した、なんとも麗しい表情で迫られてしまっては太刀打ちなんてできるはずもない。
とはいえここで折れてしまったら最後、あれよあれよといううちに、流されてしまうに違いない。
そう案じていたにも関わらず、羞恥に塗れていたはずが、いつしか王子様然とした見目麗しいレオンに魅入られたようにポーッとしてしまっていた。
そんな私がようやくハッとし、流されてなるものかと、眼前のレオンに向けて声を放つ。
「だ、大丈夫? じゃないわよ。もうヤダ。返してッ!」
そして同時に、レオンの手からブラをひったくるようにして掴んで取り返すことに成功した。
ようやく手元に戻ったブラを再度お腹に抱え込んで、頬をぷっくりと膨らませレオンを睨みつける。
するとニッコリと満面に柔らかな微笑を湛えたレオンが性懲りもなく、わかりきったことを訊いてきた。
「いや~、とっても美しかったものだからつい。それって、もしかして胸を隠すためのものかい?」
ーーまた揶揄ってくる気だ。
そうはさせないとばかりに、尚もキッと鋭い視線で射貫きつつ、さもなんでもないように答えてみせる。
「そうだけど」
するとレオンは案の定、私の羞恥を煽るようなことを言ってきた。
「ノゾミが身に着けているところ、見てみたいなぁ」
「////」
非常に悔しいことこの上ないが、大学デビューを果たしたばかりで異世界に召喚されてしまった私には、こういうことを回避する能力など備わっちゃいない。
またもや羞恥に塗れる他に術などなかった。
悔しくて悔しくてどうしようもない。