捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】
「確かに、自分でもあんまりな態度だったって思う。けど別に、レオンのことを嫌ってたとか、そういうわけじゃないの。こっちに来る前、身近にレオンによく似た人がいて。それで戸惑っていただけなの」
「もしかして、好きだったのかな? その、僕に似てたって言う人のこと」
「////ーーえ? いや、別に」
「やっぱりそうなんだね」
「////ーーッ!?」
誤解を解きたいという一心で放った言葉によって、余計なことまで暴露する羽目になった。
そればかりか、レオンのことを焚きつけることとなったようで。
綺麗なサファイヤブルーの瞳にメラメラと炎をくゆらせ妖艶な雰囲気を纏ったレオンに、瞬時に入れ替わるように身体を組み敷かれ。
「けど、いつか必ずノゾミのこと振り向かせてみせるから、絶対に」
「////ーーんんっ」
射貫くように見据え宣言してきたレオンによって、私の唇は奪われてしまうのだった。
有無を言わさず強引に口づけられているというのに、嫌悪感はまったくない。
はじめこそ戸惑っていたものの、いつしかレオンの胸にぎゅっとしがみつきキスを受け入れていた。
異世界にくる前、先輩に片想いしていたとは言っても、恋に恋していただけで、まだ誰かを本気で好きになったことのなかった私は、自分の気持ちになど気づいていなかったのだ。
その根底には、いつの日にか記憶を取り戻したレオンは、いずれは隣国にいるだろう自分の家族の元へと帰ってしまう。
記憶がないだけで、もしかすると恋人だっているかもしれない。
どちらにせよ、異世界へと召喚された自分とは違う。
無意識のうちに、元々この異世界の住人であるレオンのことをこれ以上好きになったりしないように、おそらくストッパーが働いていたのだろう。
そんなこととは知らずに、心の中で何かが燻っているのを感じつつも、それが何かもわからずに、モヤモヤとしたものを抱えつつ、レオンとの甘やかなキスにすっかり酔いしれてしまっていた。