捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】
チートな能力で危険を察知!?
麗しい王子様然としたレオンから宣言と同時にキスをされて、誓いまで立ててもらってから、二週間ほどが経った。
あれからレオンとは、これまで通り一緒に薬草探しに勤しんでいるし、相変わらず、可憐な花を見つけては、私のようだなんだと言って、熱い眼差しで見つめてくるし、甘い台詞も囁かれている。
けれどあの日誓ってくれた言葉通り、いきなりキスしてくることも、身体に触れてくることもなかった。
以前とまったく同じ。何も変わらない。
何も変わらなさすぎて、あの宣言とキスも、誓いも、淫夢もどれもこれも、実は夢だったんじゃないかと思ってしまうほどだ。
だったら、変に意識しなくてもいいし、このモヤモヤとした感情も一時の気の迷いなのかもしれない。
いきなり元いた世界から異世界へ聖女として召喚されて、普通じゃないことが立て続けに起こったのだ。
頭だって混乱していたに違いない。
だからこれまでとなんら変わらないレオンの態度に対して、寂しいなんてことを思ってしまってるんだ。
ーーそっか、そっか、そういうことか。
夢だったらレオンのことなんて意識する必要もない。
この二週間というもの、レオンのことをこれ以上意識したりしないように、幾度も幾度も必死になって自分にそう言い聞かせてきた。
その所為で、あの時、レオンが『話したいことがある』と言ってきた事など綺麗サッパリ失念していたのだ。
肝心な事を忘れて、無駄な足掻きともとれる、自身に対する言い聞かせに励んでいたのが功を奏したのかは不明だが……。
今日もこうしていつものように、レオンとともに薬草探しに勤しんでいるところである。
因みに、レオンと薬草探しをする以前、私と一緒に薬草探しをしてくれていたフェアリーはどうしているかというと。
身体は子供並みに小さいけれど力持ちのピクシーと一緒に家の裏手で薪割りをしている。
勿論、着せ替え人形ほどの大きさであるフェアリーには薪割りは無理だけれど、寂しがり屋で少々飽きっぽいところがあるピクシーのお目付役という重要な任務を遂行中だ。
常春で麗らかかつ穏やかな気候のお陰で、今日も精霊の森にある湖の畔では、可憐な蝶が戯れ、小鳥のさえずりが響きわたり、あたたかな風がそよそよと吹いている。
見上げた先には、抜けるように澄んだ真っ青な晴天が広がっていて、なんとも清々しい。
なんだかピクニックにでも来ているような心持ちになってくる。